スポーツの現場では、「身体が硬いから守備範囲が狭い」「柔らかい選手の方が動きが良い」といった言葉をよく耳にします。
しかし、本当に柔らかければ守備範囲が広がるのでしょうか。

結論から言うと、守備範囲に直結するのは前屈や開脚などの静的な柔らかさではなく、プレー中に有効な可動域(モビリティ)です。

◎守備範囲は「柔らかさ」だけで決まらない

守備範囲は、反応速度、初動の速さ、ステップワーク、そして体の使い方といった複数の要素が組み合わさって決まります。
実際、身体が硬く見えても守備範囲の広いアスリートは多く、逆に柔軟性が高くても初動が遅く、守備が苦手な選手もいます。
つまり、「柔らかい=守備がうまい」という単純な関係ではありません。

◎守備に効くのは「動ける可動域(モビリティ)」

柔軟性には、二つの側面があります。
1つ目は前屈や開脚などで測られる静的柔軟性、2つ目は動きの中で関節をスムーズに使える動的柔軟性です。
静的柔軟性は身体の硬さの目安にはなりますが、守備動作に直接影響する場面は多くありません。
一方、動的柔軟性は可動域(モビリティ)と呼ばれ、プレー中の動きやすさに直結します。

テニスの守備を例に挙げてみます。
テニスの守備範囲は、単に身体が柔らかいかどうかではなく、

  • ・相手のショットへの反応速度
  • ・最初の一歩の速さ
  • ・細かなフットワーク
  • ・打点に入るまでの身体の使い方

複数の要素が組み合わさって成立します。中でも重要なのが、股関節・足首・体幹のモビリティです。

①股関節の内外旋は左右への切り返しやオープンスタンスでの対応力を高めます。

②足首の背屈は低い姿勢を保ったまま素早く動けます。

③体幹の回旋がスムーズであれば、走りながらでも身体の向きを素早く変え、次のショットにつなげることができます。

これらのモビリティが高まることで、反応から動き出しまでのタイムラグが減り、これまで届かなかったボールに「あともう一歩」が自然に出せるようになり、守備範囲の拡大につながっていきます。

◎モビリティだけでなく他の要素も必要

守備範囲を最大化するためには、モビリティだけでなく、それを支える<スタビリティ>いわゆる姿勢を支える筋力と<スピード>が不可欠です。
柔らかいだけでは動きが不安定になり、逆に硬すぎても初動が遅れます。
必要なのは、「適度に動けて、適度に固められる体」です。

◎モビリティとスタビリティを強化するトレーニング

股関節・足関節・体幹にはさまざまなトレーニングがありますが、今回は全身的に行えるランジ+ツイストをご紹介します。

目的:
下半身の安定性(スタビリティ)を保ったまま、股関節と体幹のモビリティを高める

方法:
1.直立から片脚を前に踏み出し、前脚に体重を乗せます
2.後脚の膝を床に近づけ、上体は起こしたまま保つ
3.両手を胸の前で組み、骨盤を正面に向けたまま上半身を前脚側に回旋する
4.正面に戻し、左右交互に行う
※慣れてきたら踏み出す幅を徐々に広げていきましょう

◎まとめ

守備範囲は、単に身体が柔らかいかどうかで決まるものではありません。
重要なのは前屈や開脚といった静的柔軟性ではなく、プレー中に可動域を使って動けるモビリティです。

股関節・足首・体幹の動ける可動域が高まることで初動や切り返しが速くなり、「あともう一歩」が守備につながります。
モビリティと安定性を兼ね備えた体づくりで、守備範囲の拡大を目指しましょう。

執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 石塚 智規
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック